All your base are
belong to us

Bad_CRC / OverClocked, 2001

1989年、東亜プランによる横スクロールシューティング、Zero Wing がアーケードに登場。ニ年後、セガのメガドライブへ移植されたそれには、ストーリーを補足するイントロシーンが付け加えられた。冒頭で悪役は言う 「連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた」。海外輸出用の英語版で、そのフレーズは ”All your base are belong to us.”と翻訳されたのだが…和製ゲームに登場するバカ英語にガイジンさんがお祭り騒ぎ。文法ミスを皮肉り、おかしな言葉遣いを徹底的に笑い倒す同人Flashムービー、驚異の快心作。おまえの基地はみんな我々の仲間だ!


All your base are belong to us. 冒頭にはZero Wing のイントロが有志による音声付きで再現されている。CATSの放った一言に、ガイジンさんが食らいついた。…しかし何故今頃?
All your budgirl are belong to us. 淡々としたオープニングから一転、件のフレーズを散りばめたラップ調のBGMと共に、やはり件のフレーズを埋め込んだコラージュ写真が次々登場。
All your fortune cookie are belong to us. 中国料理の締め括り、おみくじクッキーから出てきたメッセージにも奴の一言が潜んでいた。数十種類に及ぶ画像の中にあって特に出来の良い絵。
All your keyboard are belong to us. 「お前らの拠点は全て我々が制圧した」 素直にこれだけ言えば良かったものを、日本語版のやや回りくどい表現に英訳は困難を極めた、のだろうか。
All your traffic sign are belong to us. baseは複数形にすべき、という指摘に心臓が凍る。幣サイトのURL、24hour.system.to。思いっきり複数形のSが抜け落ちているのだ。HA HA HA

(2001年4月22日)

どことなく陰湿な、演出過剰のおちゃらけになってしまいがちな他国罵倒ネタを、誰もが楽しめるパフォーマンスとして昇華したセンスを評価したい。他者の成果物をこれ見よがしに、くどくどしくもの笑いの種にするのは決して誉められた切り口ではないし、やり方を間違えれば後味の悪い思いをすることだってあるだろう。単なる揚げ足取りや中傷まがいの一方的な否定に終わらせない、諧謔の精神を盛り込んだ小粋さ、我らがバカ英語に彼らのバカ日本語で迎え撃つ決意を新たにした。

事の発端は、
OverClocked なるエミュレータ系サイトにおいて公開されていた、”和製ゲームの奇妙な英語訳を笑う”企画。SNK-Glishと名付けられたこのコンテンツでZero Wingのバカ英語が紹介されると、Bad_CRCと称するガイジンさんがとあるゲームサイトの掲示板にゲームのオープニングシーンをアニメーションGIF化したものと、上掲のようなコラージュ画像を投稿し、大勢の参加者を巻き込んでのおふざけ大会に発展、それをFlashムービーに仕立て上げた、という代物のようだ。

これがインターネット上で大受け、エミュレータ系を中心とする海外のニュースサイト・コミュニティがこぞって取り上げ始めると、Time MagazineやUSA Today、The Los Angeles Times,、Wired などオフィシャルなメディアもブームを報じて一気に広まっていったのである。…しかし残念ながら、我々日本人はそれが英語として間違っていることまでは理解できても、ガイジンさんの絶大な支持を集めるほどの面白さ、馬鹿馬鹿しさにつながるニュアンスまで汲み取るのは難しい。

筆者はどん詰まりの状況を打破すべく、ロンドン支社へ5年以上に渡り駐在し、英語に堪能な職場の先輩社員であるK氏に疑問をぶつけてみた。「こういうものがあるんですが、何がおかしいんでしょうね?」 (10数秒間の沈黙) 「…これでいいんじゃないの?文法は苦手なんだよね」 K氏はなおしばらく押し黙った後、こう続けてくれた。 「強いて言えば All the bases belong to us. になるかなあ」。 ロンドン支社は数年前、バブル経済の崩壊とともに潰れて今はもうない。


(2002年5月19日)

馬鹿Flash草創期の立役者にして、Flashの爆発的・継続的なブームを引き起こすトリガーとなってしまった気狂い帽子歌謡 hatten.swf に、借景の面白味を今に伝える ayb.swf。両者に共通する感覚は 「意味不明でありながら、とりあえず人に見せたくなるようなパワーを持っている」 ということになるだろうか。馬鹿に国境はない。前者についてはわかりやすいHattenの話に詳細なレビューが掲載されているが、ハムとコーラの謎を残したまま解説が寸止めされているうえ、第二章の各種和訳を読み進めるとますます訳が解らなくなるという落とし穴が待ち受けている。

All your base are belong to us も例外ではない。結局あれほどの話題になったにも関わらず、完全な謎解きはできないまま過去累々たる一過性の流行りものとして埋ずもれかけていた。しかし一通のメールから状況は明るい兆しを見せ始めている。彦坂 昌克氏から頂いた情報によれば、

------------------------------------------------------------------------

国内では belong to に問題があると思われがちだが、base にこそ、この文章の楽しさがある。通常、all が来たら「複数形の名詞」が来るというのは、生まれた時から英語を話す人たちには無意識に近い常識であり、その常識フィルターを通して All your base を見ると 「あなたの全ての悪徳(卑劣さ)」と読める。どう解釈しても、「基地」という意味には受け取られない。

辞書で base をよく調べてみると、形容詞の base があるはず。(もちろん、bases と複数形にすれば、これは間違いなく「全ての基地」となるが) 例えば、呑み屋のオネーチャン(たち)がこの文章を口にすれば 「わたし(たち)をめちゃくちゃにして(アブノーマルな事もOK!)」 と取れるし、神父や牧師が言えば 「あなたの罪は全て許される」 となり、何らかの対戦相手ならば 「卑劣な事をしても一向に構わないよ」 という、ラフプレーOKのような意思表示になる。

件のフラッシュには大学で試験案内と共に当該文章が掲示された画像があるが、これなどは「不正行為(カンニング)OK」という、およそ一般常識とかけ離れた意味になってしまい、更に us の発音から ass を連想すれば、輪をかけてひどい文章となる。

------------------------------------------------------------------------

筆者は以前、イギリス出戻りのK氏とはまた別の知り合いから 「belong to には卑猥なニュアンスがあって、例えば You belong to me. だと、お前は俺の女だ、と訳される」 という話を耳にしており、特に呑み屋のオネーチャンの下りは喉に差さっていた小骨が抜け落ちたような気分だ。

また川畑 智哉氏より頂いたメールでは、これは「基地」という意味で捉えてくれたのか、StarCraftの公式追加マップにそのまま
All your bese are belong to usと名付けられたフィールドなども存在するようである。発祥の地では未だに新たなコメント、写真が追加され続けており、彼らの動向から目が離せない、と締め括りたい所だがいい加減もう他の暇潰しを見つけるべきではないだろうか?ブームに乗じたマグカップやTシャツ類の不良在庫がないのかどうか、それだけが気掛かりだ。メールで情報をお寄せ頂いた彦坂氏、川畑氏のご両名に深く感謝したい。


(2003年8月17日)

「文法的にどうこうでなく、シリアスな場面で突然アホな言葉遣いをするのが笑いをさそう」 技術系コラムサイト 妖精現実 フェアリアル 上、"All your base" vs. "反省しる" というテキストに、なぜ、あの一文が笑いの対象足り得たのかについて非常に興味深く、そして単純明快な考察が掲載されている。「英語の間違いそれ自体というより、日本の有名な大企業がこんなものをノーチェックで売ってしまう、ということが、ひとつの意外性であり、したがって驚きや笑いの対象ともなる」。

詰まるところ、文法の誤りや、そこから生じたかも知れない派生的な意味合いに受けているのではなく、前後のシリアスな文脈から出し抜けにアホな言葉遣いへ転じたギャップこそが唯一無二の面白さであって、恐らくそれ以上の考えを大多数のガイジンさんは持ち合わせていないだろうという内容だ。これを
「反省しる」 (韓国の議員さんが来日して、歴史教科書の史実歪曲に抗議する際に掲げていたプラカードの哀しい誤字) になぞらえ、「All your base〜」 も同じことだと解説する。

「偉い政治家がシリアスな表情で抗議する抗議文のなかに、こんな誤字があったら、ずっこける。言いたい内容の真剣さと、ミスののほほんさの落差がはげしいからだ」 一方で、「All your base〜」 では深刻な調子でプロローグが語られるさなか、ニヒルな悪役が 「反省しる」 に相当する件のアホフレーズを口にする。確かにそれだけでも爆笑を誘うに充分なインパクトがあるだろう。フレーズに囚われるあまり、これまで無視されていた前後の流れに着目すれば、少し寂しいけれど 「(このページに)書いてあるような複雑なことではなく、もっと単純な話だ」 ということらしい。


コンテンツ作成にあたり、以下のサイトより引用或いは抜粋をさせて頂いた。

All your base are belong to us (公式配布元)
OverClocked (雑多なコラムやイラストなど)
Tribalwar.com (PCゲーム情報)
Shooting Star (こよなく愛する東亜プラン)
MAME E2J (MAMEなどの海外情報)
電脳御殿 (私生活サトラレ日記)
ミケネコ研究所 (わかりやすいPNGの話)
Battle.net (Blizzard 社運営)
妖精現実 フェアリアル (妖精運営)


BACK